優れたリーダーのマインドセットを学べる『リーダーになってもデキる人 33のルール』

上村敏彦さんの『即刻〈リセット〉したい5つのこと リーダーになってもデキる人 33のルール』を読みました。

本書を読んでまず感じたこと。それは「この著者は私と実によく似ている」ということです。

本書には、著者はITのエンジニアであり論理的で人の感情に鈍感、と書かれています。実は私も同じです。リーダー経験が豊富ということですが、私と同じように苦いリーダー経験を重ね、学んできたに違いありません。この方は、「リーダーとして苦労してきた同志なんだな」そういう思いがしました。

メンバーからリーダーになるとき、誰もがそのスタンスや考え方の違いで苦労します。そんな時、次にあげる5つのリセットは実に有効です。

・「自分の役割」をリセット
・「メンバーの見方」をリセット
・「判断しすぎ」をリセット
・「任せられない」をリセット
・「トラブルに対するスタンス」をリセット

本書では、この5つに沿って、33のルールがわかりやすく解説されています。中には、上村さんの経験や、ドラッカーなどの名言が引き合いに出され、興味を持続しながら読み進めることができます。

私自身、苦い経験をしながらやり方を改善してきただけに、身につまされる話が多かったのですが、次の点は目新しく「そこだけでも買う価値あり」と強く思わせてくれました。
◎強みに応じて責任を持たせることで生産性が飛躍的に上がる:強み×責任

◎得意なことは自分の中での基準も高くなる。だからいい結果も出せる。

◎仕事を渡した後の様子に注目して、メンバーのインセンティブを探る。

◎普段からバタフライエフェクトをして、トラブルの予兆をつかむようにする。

◎判断の記録をとって追いかけ、振り返って改善していく。

特に「仕事を渡した後の様子に注目してインセンティブを探る」は参考になりました。普通はインセンティブが効きそうな仕事を決めてから渡すものですが、渡してみてモチベーションの上がり具合をモニタすれば、本当に適した仕事を探るのに非常に有効でしょう。

また、本書の最後には、リーダー生活を充実するための勉強法&読書術が紹介されていますが、取り上げている本がちょっと意外でした。

歴史観人間性を学べる司馬遼の本はわかるとしても、『鬼平犯科帳』が最初に取り上げられています。その理由は何か。ぜひ、本書で確認していただければと思います。

本書は、リーダーになる前に読んでおきたい本。本来はそうあるべきなんでしょうが、「生身の人を使う」のがリーダーだけに、やはり一度は失敗経験をしてみなければ、その難しさもやりがいも、心底わかるものではありません。

なぜかリーダーの役割で失敗してつまずいている方に、そっと差し出したい本だと思います。