心を解き放て! -『潜水服は蝶の夢を見る』

潜水服は蝶の夢を見る「もし、自分が同じ境遇だったらどうしただろうか」と考えさせられる映画『潜水服は蝶の夢を見る』。でも、あなたが、主人公ジャンのように生き抜くのは、おそらく難しい。
アカデミー賞の最有力候補と言われ、大手書店でも原書の品切れが続いている、この映画を見た。
主人公ジャンは、フランスの雑誌『ELLE』の名編集長。ある日、突然、脳梗塞に倒れて、ロックト・インシンドロームになってしまう。

ロックト・インシンドロームとは、意識があり考えることはできるが、自分の体の中に封じ込められてしまう症状。脳梗塞の中で最も重度に分類され、ほとんど体を動かすことができない。さて、いかに生きるべきか。

この映画では、「まばたき」だけで自分の意思を伝えられるジャンが、理学療法士や別れた妻、3人の子供、友人らと会って、過去を後悔したり生きる気力を取り戻したりする気持ちの変化を追う。

ジャンは、倒れる前に、出版社と本の出版契約をしていたことを思い出す。そこで、「まばたき」のみで文章を綴って伝え、編集者に毎日、記録させる。

体の自由がきかない潜水服を着ていても、記憶はよみがえり想像は蝶のように舞っていく。死に対峙して目覚めた彼が、体という器に縛られず、真の意味で精一杯生きた実話である。

人はいかによく生きるべきか。

これは、最近、よく考えるテーマである。人間はいずれは死ぬ。一日、一日を生きぬくこと、家族の大切さを考えさせられた映画だった。

しかし、体の自由がきかない「潜水服」とは、不自由な人間の体だけを意味しない。なんの制約もない体であっても、精神が解き放たれず、ロックインされている人々がいかに多いことだろうか。