レビューの星5つが嬉しいとは限らない

著者として、自分の本に良い評価がつくのは嬉しい限り。もちろん、悪い評価がつけば落ち込むこともある。だが、悪い評価であっても、歓迎するケースもある。ほしいのは、「正当な評価」それのみである。

ご存知のとおり、Amazonにはカスタマーレビューがよく掲載される。しかし、発売後、間もなく掲載される書評の中には、どうみても著者の知り合いからついたとみられるものが数多くある。私はその効果に疑問をもっている。
なぜなら、信頼性が失われるからである。たとえ、良い本であったとしても、それを評価する視点が公平性を失えば、本自体、いや著者自身の信頼性が損なわれやすい。実際、過剰広告気味のレビューがついている本を避けたり、Amazonの書評を信用しないという人も、周りに増えてきているのではないだろうか。

Amazonでは内容全体を見ることができないため、エディターレビューや目次、カスタマーレビューを見て、読前感で判断するしかない。読前感として、問題点を把握できていれば、納得のうえ購入することができるだろう。しかし、読了後、食い違う感想をもったとき、購入したことを後悔させることになる。

私自身、リアル書店に行って本の内容を確認し、タイトルと出版社をメモったうえで、Amazonで大量購入することが多い。しかし、たまにネットの情報だけで判断することもある。そして、失敗も数知れなく経験している。

Amazonの書評は、バズマーケティングの一つとしてよく知られている。バズマーケティングは、クチコミを利用した新しいマーケティング手法。売り手からの宣伝ではなく、消費者の噂となって評価が広まることで信頼できる情報と理解され、購買に走らせる。しかし、一旦、その噂が詐欺まがいだとわかったとき、バズマーケティングは負の回転を始めてしまう。


最近刊行した『SEのための聞く技術』に、Amazonで書評がついた。私は、さほど良い評価ではないにしろ、書評をアップしてくれた読者に非常に感謝した。それは、本の真理を見事についており、改善点も見出すことができたからだ。

izagon氏が言うとおり、「聞く技術」を本当の意味で身につけるには、本を読んだだけではダメなのである。ロールプレイングなどの研修が欠かせない。しかし、世の中には、人の話をうまく聞けないSEが多くいる。この本は、そんなSEに向けて、まずは聞く技術があることを知ろう。そして、少しでも仕事に使っていこうよ、というメッセージを発信したつもりである。

つまり、ある程度、コミュニケーション能力のあるSEなら、この本を読む必要はない。コミュニケーションスキルを身につけたいと考えはじめているSEを、その入り口に立たせることを狙っている。